兼業 基礎知識

兼業 割増賃金ってどうなる?

兼業 割増賃金ってどうなる?

本業のあとに副業を入れて働く人が増える中で、「残業代はどちらの会社が払うのだろう」「副業先の時給は割増になるのだろうか」といった疑問を持つ人も多いと思われます。

兼業では、会社ごとに別々に働いていても、労働時間が一定の条件で通算されます。

その結果、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えると、割増賃金(残業代)が発生する可能性があります。

一方で、誰が支払うのか、どの時間が割増対象なのか、36協定はどうなるのかは分かりにくい領域です。

この記事では、兼業における割増賃金の基本から、実務上つまずきやすいポイント、計算例、そして2027年4月に予定されている見直し動向までを、客観的に整理します。

兼業の割増賃金は「通算で超えた分」に発生します

兼業(副業・ダブルワーク)の割増賃金は、本業と副業の労働時間を通算し、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた場合に発生します。

そして支払い義務は原則として、後から労働契約を結んだ会社が負うと整理されています。

ただし、先に契約した会社が、他社で働いている事実を知りながら労働時間を延長させた場合などは、先の会社側が負担するケースもあるとされています。

通算ルールがある理由と、押さえるべき法定基準

法定労働時間(1日8時間・週40時間)が基準になります

割増賃金の判断は、まず法定労働時間を超えるかどうかで決まります。

兼業では会社が異なっても、労働基準法上の考え方として労働時間が通算されるため、単独の会社では残業がなくても、通算で超えれば割増が発生し得ます。

ここが、兼業の割増賃金が分かりにくい最大のポイントだと考えられます。

割増率は「時間外25%以上」が基本です

割増率は、一般に次の基準で整理されます。

  • 時間外労働:25%以上(月60時間超は50%以上)
  • 休日労働:35%以上
  • 深夜労働:深夜割増が追加(時間外深夜は合算で50%以上になる例があります)

兼業の場合も、通算の結果「時間外」「休日」「深夜」に該当すれば、同様の割増率が問題になります。

支払い義務は「後から契約した会社」が原則です

実務で最も問合せが多いのが、「どちらの会社が払うのか」です。

整理としては、後から労働契約を結んだ会社(通常は副業先)が、通算によって生じた時間外部分の割増賃金を支払うのが原則とされています。

たとえば本業が先、副業が後で、本業ですでに8時間働いた日に副業を2時間行うと、副業の2時間は時間外として扱われ、原則として副業先が割増賃金を支払うことになります。

例外として「先の会社が延長させた」場合は負担が変わることがあります

厚生労働省のガイドライン等の整理では、先に契約した会社が、従業員さんの他社労働を把握しながら労働時間を延長させた場合、先の会社が割増賃金の支払い義務を負う場面があるとされています。

つまり、形式的に「副業だから副業先が必ず払う」とは限らず、どちらの会社が、通算で超える働き方を生じさせたかが論点になり得ます。

36協定や労働時間管理の論点も残ります

時間外労働を適法に行わせるためには、一般に36協定の締結・届出などが関係します。

兼業では、通算によって時間外が発生し得るため、会社側は「自社の管理外の労働」が影響する点に難しさがあります。

この労働時間管理の課題は、制度見直しの議論でも注目されている論点です。

2027年4月に通算ルール等の大きな変更が予定されています

最新動向として、2027年4月から副業・兼業の労働時間通算ルールと割増賃金の計算方法に大きな変更が予定されているとされています。

労働基準関係法制研究会の報告書などで現行ルールの見直しが議論されており、今後は会社側の管理方法や計算実務が変わる可能性があります。

現時点では「予定」とされるため、確定した運用は行政発表や今後の法令・通達等での確認が重要になります。

兼業の割増賃金が発生する場面を計算例で確認します

本業8時間+副業3時間(時給1,000円)の例

本業で8時間働いた後に、副業で3時間働いたケースを想定します。

通算で1日8時間を超えるため、副業の3時間は時間外労働として扱われます。

割増率は時間外25%以上が基本のため、時給1,000円の場合は次のイメージになります。

  • 副業の割増時給:1,000円 × 1.25 = 1,250円
  • 副業3時間分:1,250円 × 3時間 = 3,750円

この例は、人事労務系メディアでも典型例として紹介されています。

副業が先で短時間、本業が後で長時間になる例

午前に副業を2時間、午後に本業を8時間行うようなケースでは、労働契約の順序によって支払い義務の整理が変わり得ます。

リサーチ結果では、副業先が短時間契約先で、本業が後契約となる場合、本業側が負担する可能性が示されています。

このため、単に「本業=先」「副業=後」と決めつけず、雇用契約を結んだ順序の確認が実務上重要です。

本業が他社労働を把握した上で残業を命じた例

従業員さんが副業をしていることを本業が把握しており、そのうえで本業側が所定時間を延長させた場合、割増賃金の負担が本業側に及ぶ可能性があります。

たとえば、当初は本業8時間+副業2時間の予定だったところ、本業が残業を追加して9時間にした場合などは、誰が「超過」を生じさせたかが問題になります。

この領域は個別事情で結論が変わり得るため、就業規則、申告フロー、実際の指示命令の有無などの事実確認が欠かせません。

深夜帯に副業を入れた例(時間外+深夜の重なり)

本業で日中に8時間働き、その後に副業を22時以降に行う場合、通算による時間外に加え、深夜割増が関係します。

この場合、時間外割増(25%以上)+深夜割増が重なるため、合計の割増率が高くなることがあります(例として50%以上になるケースがあるとされています)。

実際の計算は、会社の賃金規程や割増賃金の端数処理、深夜時間帯の切り分けで変動するため、給与計算担当者さんは慎重な確認が必要です。

まとめ:通算と契約順が、兼業の割増賃金を左右します

兼業の割増賃金は、本業と副業の労働時間を通算し、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた場合に発生します。

支払い義務は原則として、後から労働契約を結んだ会社が負うとされています。

一方で、先に契約した会社が他社労働を把握しながら労働時間を延長させた場合など、例外的に負担が変わる可能性があります。

また、2027年4月から通算ルールや計算方法の大きな変更が予定されているため、最新情報のフォローも重要になります。

不安がある場合は「申告」と「記録」から整えるのが現実的です

兼業の割増賃金は、制度上は通算が原則である一方、実務では情報がそろわないと適正な計算が難しいと考えられます。

従業員さんは、まずは就業規則や副業申請のルールに沿って、勤務予定や実績を申告し、勤務時間の記録を残すことが現実的です。

会社側も、申告フォーマットの整備や、労働時間の把握方法、割増賃金が発生した場合の取り扱いを事前に決めておくと、トラブル予防につながると思われます。

判断に迷う場合は、社会保険労務士さん等の専門家や、行政の相談窓口で事実関係を整理しながら確認することが望ましいです。